整形外科疾患の全てはこれ【まとめ】

さて、評価の基本
「 PART11」です。

評価の基本、今回で最後です。
まずは最初からの復習です。

評価で最初に考えるべきことは、
どんな「力」がからだにかかってきたのか?
そして、
どんな「力」が患部の組織を傷つけたのか?

これだけです。

とにかく、これが評価の始まりです。
これは忘れないでください。

そして、「力」とは、
「3つの外力」と「6つの内力」です。

3つの外力
「不可抗力的な外からの力」
「重力」
「反力」
(詳細は11-5・11-6・11-7・11-8をお読みください)

6つの内力
「引っ張り」
「圧縮」
「剪断」
「曲げ」
「ねじれ」
「摩擦」
(詳細は11-9・11-10をお読みください)

ここまでが、今までのまとめです。

6つの内力は、
患部の組織を直接傷つけている力です。

組織を壊した実行犯です。

なので、
この力を取り除くことは、
組織を傷つける力を無くすことになります。

どういうことかと言うと、
筋収縮による
「引っ張り」という内力が
筋付着部の組織損傷を引き起こしたとします。
オスグッドや内・外側上顆炎だと思って下さい。

筋収縮による引っ張りという内力によって、
患部の組織が傷つけられたのであれば、

「引っ張る力」をゆるめてあげれば
良いと思いませんか?

内側・外側上顆炎で
前腕の筋緊張を落とすことで
症状緩和という即時効果が得られるのは、
このためです。

内力の発生原因がちゃんとわかって、
それが何とかできるものであるなら
即時効果を出せます。

逆に、
内力を把握せずに未知のものに挑むから、
即時効果が出たり出なかったり、
結果にばらつきがあるんです。

即時効果を出すことが難しい内力の場合、
つまり、
なんともしようがないものが原因だと、
即時効果を出すことは困難となります。

それを事前に把握していないと、
勝ち目のない戦に挑んでしまって、
即時効果を出せずに落ち込むわけです。

患部にかかっている内力は何なのか?
組織を傷つけた内力は
いったい何なのか?
それがわかれば、

即時効果を出せるか?出せないか?は、
必然的に判断できます。

これが、内力と即時効果の関係性です。

6つの内力は組織損傷の実行犯です。
事前にしっかり把握してから、治療に臨みましょう。

 

そして、次が最後のポイントです。

「3つの外力」と「6つの内力」と「痛み」
これらの因果関係についての話です。

「3つの外力」「6つの内力」
それはわかりました。で、何なの?
だからどうすればよいの?
知ったことをどう臨床推論に反映するの?
それをお伝えしたいと思います。

まずは結論からお伝えします。

外力

内力

組織損傷

痛み

これが結論です。

まずは、「外力」が身体にかかってきます。
そして、「内力」が身体の中で発生します。

この順番が変わることはありません。

「外力」が先で、「内力」が後です。

つまり、
「3つの外力」
「不可抗力的な外からの力」
「重力」
「反力」

これらが、組織を傷つける「力」の根源です。

先ほど、
6つの内力が「実行犯」とお伝えしました。

3つの外力は「首謀者」です。
「実行犯」を操っています。

なので、
「実行犯」を取り押さえても、
「首謀者」を何とかしなければなりません。
つまり、
即時効果が出したとしても、
外力を何とかしなければ、再び組織損傷は起こります。

整形外科疾患の全ての根源は「3つの外力」です。

では、臨床でどうやって考えていくか?
最後に一緒に考えていきましょう。

 

首謀者である「3つ外力」のうちの1つ
「不可抗力的な外からの力」
この力が原因の場合、それは外傷です。

この場合、
組織損傷を引き起こして
痛みの原因となった首謀者を、
理学療法で取り除くことは不可能です。
なぜか?
組織損傷を引き起こした首謀者は、
リハビリ時にはもう存在していないからです。

「事故でぶつかった」
「サッカーで捻挫した」

このような外傷による力は、
受傷した瞬間のみに存在し、
リハビリ開始段階では存在していませんよね?

なので、受傷機転を把握して
「不可抗力的な力」が加わった結果として、
患者さんの痛みが発生していると判断できたら、
こう考えます。

「不可抗力的な力」という外力が
からだにかかった結果、
どのような「内力」が患部に発生して、
どの組織が、どのような損傷をしたか?
これを考えます。

そして、

その創傷治癒過程を考慮して
経過観察および必要な治療を実施します。
難しく考える必要はありません。
「首謀者」はもういないのですから。
基本的には自然治癒します。

一方、

3つの外力のうちの「重力」「反力」
これらが原因の場合は違います。

「重力」「反力」
これらの外力がからだにかかって、
組織を損傷させる
内力が発生した原因は、
患者さんの身体機能に問題があるからです。

なので、積極的なリハビリ介入が必須です。

「重力」「反力」
これらの外力と関係が深い要素は、
「姿勢」
身体の支え方」
「歩き方などの動作方法」
などなどです。
これらを改善しなければ、

いつまでも首謀者は消えず、
実行犯は患部を傷つけ続けます。

仮に痛みが治まったとしても、
いつか再発する恐れがあります。

だって、
まだ首謀者が
患者さんの中に存在し続けているわけですから。。。

 

以前にお伝えした例で考えてみましょう。
「3つの外力:重力編」で挙げた頭部前方偏位姿勢

まず、「頭部」という重さのある物体に
「重力」という力がかります。

過去に学校で勉強した「てこの原理」の説明で
お聞きになったことがあると思いますが、
頭部が前方に偏位するほど(ずれるほど)
支点から頭部重心位置までの距離が離れます。
(支点は環椎後頭関節・上位頸椎などです)
すると、

頭部が前方に転がり落ちるような力が大きくなります。

頭部を落とそうとする力に対抗して
頭部の位置を正常に保つためには、
頭頚部伸展筋に頑張ってもらわなければなりません。

その結果、
頭頚部伸展
筋の持続的な収縮により
筋内の毛細血管を圧迫したり、
筋間を通る末梢神経を圧迫するような、
圧迫と言う「内力」が生じます。

すると、

組織の虚血状態
代謝産物の蓄積によって
侵害受容器が刺激されたり、

末梢神経を絞扼して
神経障害性の痛みを引き起こすかもしれません。

もしこんな状況なら、
圧迫という「内力」を無くさないと
患部の状況は変わりません。

取り除きたい圧迫という「内力」は、
「頭部にかかる重力」という「外力」によって
引き起こされたものです。

マッサージなどで筋緊張を和らげ、
組織圧迫という内力を取り除いたとしても
それは一時的なものです。

臥位で治療を受けていた患者さんが
治療が終わって立位となり、

頭部が抗重力状態に再びさらされれば
緊張はどんどん亢進してきます。
せっかく取り除いた組織を圧迫する内力は増
治療直後から増えてしまい、症状再発です。

即時効果が出たとしても、
「重力」による影響自体を改善しないと、
根本的には治りません。

では、

頭部前方偏位を改善し、
頭部にかかる重力の影響を小さくして、
頭頚部伸展筋への負担を軽減することが
痛みの根本改善につながるのであれば、
このように考えるはずです。

なぜ頭部前方偏位なんだろう?と。

そして、
頭部前方偏位の原因が何なのかを知りたい!
ということになって初めて、
頭部前方偏位を引き起こす身体要因
「柔軟性」
「筋力」
「関節モビリティ」
「体幹スタビリティ」
などなどの観点から身体評価をして、
頭部前方偏位の改善に必要な身体要素を
特定していくための評価を実施するのです。

大雑把ではありますが、
こんな感じで考えていくわけです。

「外力」→「内力」→「痛み」
この痛みの発生順序を意識する。

そして、逆算するんです。

「痛み」→「内力は何?」→「外力は何?」と。

そうすれば、
評価で何を診なければならないのか?
それが分かります。

治療で何をしなければならないのか?
それが分かります。

シンプルに言ってしまえば、

3つの外力

6つの内力

痛み

この流れを押さえることが
評価の基本なんです。

痛みの根本原因
首謀者は「3つの外力」です。

繰り返しますが、

3つの外力のうち、
「不可抗力的な外からの力」の場合、
つまり「外傷」の場合、

組織を傷つける「力」はもう存在していません。

創傷治癒過程を考慮して対応すれば
ほっといても治ります。

もしも、治癒遷延があれば、
傷ついた患部を治りづらくさせるような
他の外力(重力・反力)が

患部にかかり続けているのでは?
と、考えればよいわけです。

遷延する前に、
予測して対応できていれば尚よいです。

そして、
外傷以外のケースでは、

重力・反力

6つの内力

痛み

この関係性を考えていかないといけないのです。

で、
組織損傷の実行犯「6つの内力」を無くし、
首謀者である「重力と反力」をコントロールする。

そのコントロールを可能にする為に、
「運動療法」を実施するのです。

 

運動療法の目的が、
ただ単に「〇〇筋の筋力強化!」
ただ単に「〇〇筋の柔軟性改善!」

ってだけでは、治療として不十分です。

痛みの原因となる重力・反力
これらをコントロールする為に、
「運動療法」は必要なのです。

痛みのきっかけとなった「重力」「反力」を、
組織を傷つけることのない正常状態に変える。
その為には、
身体コントロール能力の改善が必須です。

運動療法は、
身体コントロール能力を改善するための
重要な治療手段です。

より良い運動療法を考えるためにも、

そして、

痛みの根本原因を明らかにするためにも、

「力を診る」という考え方に基づいて、
臨床に臨むことが重要です。

 

これで全てです。
お伝えしてきたポイントを
今一度確認してみてください。

そして、
臨床で実際に使い始めてみてください。

最初は難しく感じるかもしれません。

でもきっと、あなた自身だけでなく、
患者さんのためにもお役立ちできるリハビリになると思います。

 

開催している勉強会では、
ここまでにお話した考えに基づいて、
整形外科クリニックにおける評価と運動療法を
お伝えしています。

目には見えない「重力」「反力」
これらを実際にどうやって
からだへの負担としてイメージするのか?

そして、
その存在を踏まえて、
どのように評価するのか?
どのように治療を導き出すのか?

このようなことを
具体例や実践も交えてお伝えしています。

ご興味があれば、ぜひご参加下さい。

いつの日かお会いできることがあれば嬉しいです。
また、これからも
少しでも
皆さまの力になることができれば嬉しいです。

読みづらい箇所もあったかと思いますが、
ここまでの長文を最後までお読み下さり、
本当にありがとうございました。

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