うまく分類すれば、臨床はとってもシンプル【その3】

では、評価の基本
「PART7」です。

何度も何度も繰り返しますが、
評価ポイントは「力を診る」です。
組織を傷つけて痛みを引き起こす3つの力
これを考えることが、最初にやるべきことです。

今回は3つの力の3つ目です。
一緒に考えていきましょう。

 

ある患者さんが、
左膝の痛みを訴えて来院されました。

数年前にも痛くなって病院に行ったところ、
膝OAと診断されたそうです。

普段そんなに出歩かない生活とのことです。

以前に膝を痛めて以降、
痛みはほとんど気にならず過ごしてきました。

しかし、

3日前に友達と遊びに出かけた際、
たくさん歩いたそうです。

歩いている途中から痛みが増してきて辛かった
けれども、
その日はなんとか家に帰ることができました。

しかし、翌日以降も痛みが引かず、
今回来院されたようです。

レントゲン画像で、
内側裂隙の狭小化が確認できました。

今は何もしていなくても
じんわりとした痛みがあり、

歩行・階段動作など、
体重が乗ったときに痛みが増すとのことです。

 

「膝OA・・・」

「大腿四頭筋の強化だ!」

「パテラの可動性だ!」

「膝のROMだ!」

ではなくて、
今回の痛みを発生させた「力」
組織損傷を引き起こした「力」
これをしっかりと確認しましょう。

 

まず、
関節変形は、事故などの外傷でなければ
1日で出来るものではありません。

関節軟骨を変形させる「力」が、
膝の内側にかかり続けてきたはずです。

何もないのに変形するでは不自然ですよね。

今回のケースは、
長年ずっと左膝内側の関節軟骨に
組織を損傷させる「力」が加わっていた。
けれども、
体重を支えるという機会が
比較的少ない生活だったため、
痛みの増悪には繋がっていなかった。

しかし、

今回出かけた際の長時間歩行によって、
組織を損傷してしまったことが予想されます。

もしかしたら、歩行で生じている
比較的小さな力による反復負荷ではなく、
「バランスを崩して踏ん張った」というような
瞬間的な強い力が
かかったことも考えられます。

でも、いずれにせよ、
「どんな力が組織損傷を引き起こしたか?」
という根本的な点では同じ力となります。
細かいエピソードは気にしないでください。

 

では、膝内側にかかる力とは?

痛みが強まるのは体重がかかったとき。

荷重時に発生した「力」が、
組織を損傷させた「力」である可能性が高い。

では、
荷重時に膝内側にかかる「力」とは?
一体なんでしょうか?

「体重による力?」
「前回に確認した重力?」

確かにそうです。

でも今回は、
それだけでは十分ではありません。

今回のケースで膝内側にかかる力は、
「重力」だけでは説明がつかないからです。

足が接地しているとき、
からだには「地面からの力」もかかっています。

からだが何かと接していて、
接触面に向かって力をかけている場合、
接触面側からもかかってくる力があります。

これが3つ目の力、「反力」です。

バイメカではよく「床反力」といいますが、
床に限りません。

からだと接している面があり、
そこに力をかけていたら
必ず身体側に向かって力が帰ってきます。

座っていれば
「座面からの反力」

背もたれによりかかれば
「背もたれからの反力」

患者さんをマッサージすれば
「患者さんの身体からの反力」

こんな風に、何かに力をかけた場合、
必ず自分のからだに帰ってくる「力」が存在します。

この現象は、
誰にでも、
何にでも、
どんなときも、
必ず当てはまる地球上での決まりごとです。

つまり、
からだと何かが接触している場合は、
接触面からの反力を考える必要があります。

「作用‐反作用の法則」ともいいますよね。

 

前回紹介したケース(座位時の猫背)で
患部への力を考えたときは、
主に重力だけを考えれば済んだのですが、
今回のケースのように接触面がある場合、
「反力」を考慮しなければならないのです。

接触面から身体に向かって
どのように反力がかかってしまい、
この人の患部は損傷したんだろう?

そう考えることが、
「評価すべきことがいったい何なのか?」
ということに繋がります。

反力をコントロールするために
必要な身体能力があるかどうかを
考えれば、
何を評価しなければならないかが決まります。
そして、
評価結果に基づいて対策を立てれば、
個別的で
効果的な治療方法がみつかります。
そうなることは必然です。

膝OAの際によく選択される治療法
「大腿四頭筋の強化」
「膝ROM」
「柔軟性改善」

もし仮にこれらの治療方法が
反力を軽減するのに役立ち、
膝内側の軟骨組織を壊す力を軽減できれば、
実施すべき運動療法となります。

治療を選択する理由は
多岐にわたるかもしれませんが、

「みんなよくやっているし、、」
なんて理由では話になりません。

そんな他人まかせな感じでは
いつまで経っても患者さんの力になれません。

 

「反力」とか「作用‐反作用」とか、
苦手意識の強い言葉が出てきて、
「ここまで読んできたけど・・・」と、
心が曇ってはいませんか?

嫌いだった物理・・・
苦手だった物理・・・
理解できなかった物理・・・

そんな理由で、
力で考えることを諦めてしまうことは、
臨床で無視できないとっても大事なことを
自分の都合で放棄してしまっているだけ。
そんな風に私は思います。

理学療法士に関係ないことなのであれば、
学生時代の必須科目だったでしょうか?
国家試験の出題範囲になるでしょうか?

なんで学んだのか?

それは、臨床で自分の頭をしっかり使って
効果的なリハビリを考える際に必要だからです。

 

組織を傷つけて痛みを引き起こす3つの力
1例目「不可抗力的な外からの力」
2例目「重力」
3例目「反力」
この3つの力が、
クリニックの臨床で
考えなければならない
組織損傷を引き起こした根本原因です。

では次回、
改めて3つの力について振り返ってみましょう。

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The workshop on physical exercise
代表:三井祐紀